炎が見えない電気ストーブは、石油ストーブより安全だと思われがちだ。ところが東京消防庁の資料では、令和2年から6年までの5年間に管内で起きたストーブ火災451件のうち、電気ストーブによる火災が76.7%を占めている。ストーブ火災による死者43人のうち34人も、電気ストーブが原因だった。
火が出る仕組みは単純で、熱くなった電気ストーブに布団や衣類が触れる。寝ている間に布団がずれる、室内に干した洗濯物が落ちる、といった日常の動きがきっかけになる。
冬の部屋干しを暖房に頼っている家は、乾かし方そのものを変えるのが早い。パナソニックの衣類乾燥除湿機F-YEX200Dは、同社の試験条件で約2kgの洗濯物を冬季に約99分で乾かすとしている。ストーブの前に洗濯物を並べなくても乾く。
電気ストーブで火災が多い理由

東京消防庁が平成28年の住宅火災106件を分析した資料では、ストーブ火災の出火の経過で最も多いのが「可燃物が接触する」の58件だった。最初に燃えた物は布団類が40件(37.7%)、衣類・繊維類が22件(20.8%)で、この2つで6割近くになる。
令和8年1月に発行された最新の資料でも傾向は変わらない。
| 項目(東京消防庁管内、過去5年間・令和2〜6年の住宅火災) | 数 |
|---|---|
| ストーブを出火原因とする火災 | 451件 |
| そのうち電気ストーブによる火災 | 76.7% |
| ストーブ火災による死傷者 | 254人(死者43人、負傷者211人) |
| 死傷者のうち電気ストーブが原因 | 約7割の174人 |
| 死者のうち電気ストーブが原因 | 34人 |
| 死者のうち65歳以上 | 35人 |
| 布団類や衣類・繊維類に着火した件数 | 144件(56.7%) |
電気ストーブは、石油ストーブのように給油の手間がなく、スイッチひとつでつけられる。寝室や脱衣所、机の下など、燃える物のすぐそばに置かれやすいことが、火災の多さにつながっているというのが編集部の見方だ。
東京消防庁の最新の資料では、ストーブ火災で燃えた物のうち、スプレー缶などのガス類が3番目に多い。ストーブの近くに置いたスプレー缶が熱で破裂し、漏れたガスに引火して爆発する。整髪料や殺虫剤、制汗剤のスプレーを、ストーブの前の床や棚に置かない。
寝ている間と、つけたままの外出

東京消防庁は、火災の事例として次のようなケースを紹介している。
- 60代の女性がベッドの近くで使っていた電気ストーブに布団が触れて出火し、住宅が全焼して女性が亡くなった
- ダイニングテーブルの下で使っていた電気ストーブをつけたまま外出し、近くの木製の椅子の脚や座布団が触れて出火した
- 電気ストーブにバスマットを掛けておいたところ、何らかの原因でスイッチが入って火災になった。住宅用火災警報器が鳴って気づき、119番通報と消火器で火が広がるのを防いだ
最後の例は、スイッチを切っていても、プラグが差さったままなら火災は起こりうることを示している。物が当たってスイッチが入ったり、ペットや子どもが触れたりすることがある。東京消防庁も、使わないときはプラグを抜くよう呼びかけている。

外出するときと寝るときは、電気ストーブを必ず消す。電気ストーブの上や前に、タオルやバスマット、衣類を掛けて乾かさない。使わない季節にしまうまでの間も、プラグは抜いておく。
「3フィート離す」というアメリカの目安

米国消防庁(USFA)は、暖房の火災を防ぐために燃える物はすべての熱源から少なくとも3フィート(約90cm)離すよう求めている。部屋を出るときや寝るときは、電気ヒーターを消す。
アメリカでも、持ち運べるヒーターの火災は件数こそ少ないが、命に関わりやすい。USFAによると、2017〜2019年に住宅で起きた暖房の火災のうち、持ち運べるヒーターによるものは3%だったが、死者が出た暖房火災では41%を占めた。
ノースカロライナ州立大学の普及事業(N.C. Cooperative Extension)は、2026年1月の記事で、燃えやすい物を3フィート以上離すことに加え、延長コードや電源タップを使わないこと、倒れたときや過熱したときに自動で止まる機能のある製品を選ぶこと、コードがすり切れたものやコンセントが熱くなるものは使わないことを挙げている。
日本の寝室は狭く、ベッドとストーブの間に90cmを取るのは難しいこともある。そういう部屋では、ストーブをベッドの横ではなく足元側の離れた位置に置く、寝る前に消すことを前提に使う、といった配置の工夫で距離を稼ぐ。
ストーブの前に、物を置かない範囲を床のテープなどで決めておくと、家族全員が距離を守りやすい。洗濯かごや脱いだ服、クッションを、その範囲に置かない習慣をつける。
洗濯物は暖房ではなく除湿で乾かす

東京消防庁は、ストーブの上や近くで洗濯物を乾かさないよう呼びかけている。冬に部屋干しをすると、乾きにくさからストーブの前に洗濯物を寄せたくなるが、干した洗濯物が落ちたり風で動いたりして、ストーブに触れることがある。
暖房の熱で乾かす代わりに使えるのが、衣類乾燥除湿機だ。パナソニックのF-YEX200Dは、除湿能力が定格20L/日(除湿・強モード、室温27℃・相対湿度60%を保ったとき)のエコ・ハイブリッド方式で、同社は季節に合わせて風量を調節し、1年中除湿すると説明している。衣類乾燥の時間は、日本電機工業会の自主基準による試験(約2kgの衣類、20℃・湿度70%、6畳相当)で約70分、冬季は約99分が目安だ。
除湿機は除湿と送風で洗濯物を乾かすので、洗濯物を熱源に近づけずに済む。部屋干しを洗面所や寝室でするなら、ストーブとは別の場所に干し、除湿機の風を当てる。
除湿機で部屋干しをするときも、洗濯物と本体の吹き出し口をふさがないように置く。ストーブと同じ部屋で使う場合は、洗濯物をストーブから離した側に干す。
住宅用火災警報器は寝室から

ストーブ火災の資料で東京消防庁が重ねて勧めているのが、住宅用火災警報器の設置だ。先のバスマットの例のように、警報器が鳴れば、火が小さいうちに気づける。
神戸市の説明によると、消防法では各寝室と、2階や3階に寝室がある場合の階段に住宅用火災警報器を付けることが義務になっている。台所などへの設置は市町村の条例で違い、神戸市は条例で台所にも義務づけている。東京消防庁は、全ての居室・台所・階段への設置を呼びかけている。電気ストーブを寝室で使う家ほど、寝室の警報器が電池切れになっていないかを冬の初めに確かめておく。





