ドラム式洗濯乾燥機の槽洗浄に、ドラッグストアで見かける酸素系の洗濯槽クリーナーを使おうとしているなら、その前に取扱説明書を開いてほしい。日立のビッグドラム BD-STX130M、シャープ ES-X12C、パナソニックのななめドラムの説明書は、3社とも槽洗浄には塩素系を使うと書いている。シャープは「酸素系は泡が大量に発生し、故障の原因になります」とまで明記している。
縦型洗濯機で定番の「酸素系でつけ置きして、浮いた汚れをすくう」やり方は、少ない水でドラムを回すドラム式には合わない。年末の大掃除で洗濯機も手入れするなら、クリーナー選びから見直しておきたい。
酸素系を避けるのは泡と汚れ残りのため

3社の説明書が酸素系や台所用の漂白剤を避けるよう書いている理由は、少しずつ違う。並べると、ドラム式で何が起きるのかが見えてくる。
| メーカー | 使ってよいもの | 使わないもの・理由 |
|---|---|---|
| 日立(BD-STX130M) | 純正の洗濯槽クリーナーSK-750、衣料用塩素系漂白剤(表示がなければ約200mL) | 酸素系の洗濯槽クリーナーはドラム内に汚れが残る場合がある。酸素系漂白剤と台所用漂白剤は泡が大量に出て、故障や水漏れの原因になる |
| シャープ(ES-X12C) | 純正の洗濯槽クリーナーES-CD(塩素系)、市販の塩素系洗濯槽クリーナー | 酸素系は泡が大量に発生し、故障の原因になる。衣類用洗剤や台所用漂白剤は泡があふれて水漏れの原因になる |
| パナソニック(ななめドラム) | 純正の洗濯槽クリーナーN-W2、衣類用の塩素系漂白剤(約200mL) | 酸素系漂白剤、台所用塩素系漂白剤、界面活性剤入りの市販クリーナーは泡立ちが多く、途中で排水されて十分な効果が得られない |
ドラム式は、ドラムを横向きか斜めにして少ない水でたたき洗いする。泡が立ちすぎると、洗濯機は泡を減らすために途中で排水したり、ドアの内側まで泡で埋まったりする。パナソニックの説明書にある「途中で排水することがある」という一文は、クリーナーが働く前に流れてしまうという意味だ。
台所用の塩素系漂白剤も対象外という点は見落としやすい。シャープとパナソニックは、台所用漂白剤を名指しで避けるよう書いている。説明書が指すのは「衣類用(衣料用)の塩素系漂白剤」か「塩素系の洗濯槽クリーナー」で、同じ塩素系でも台所用で代用しない。
日立は、洗濯機用の塩素系漂白剤の種類によっては、槽内に白いかすが残ることがあると書いている。残ったかすは湿った布でふき取れる。かすを残したくない場合は、衣料用塩素系漂白剤か純正のSK-750を使うよう案内している。どの製品を使う場合も、運転中は窓を開けるなどして換気し、塩素系と酸性タイプの洗剤を一緒に使わない。
頻度は月1回と「お知らせ表示」が目安

槽洗浄の頻度は、メーカーによって示し方が違う。いちばん具体的なのはシャープのES-X12Cで、目的ごとにコースとクリーナーを分けている。
| 目的 | クリーナー | 洗浄時間 | 所要時間(洗浄〜乾燥) |
|---|---|---|---|
| ふだんの簡単な手入れ(1週間に1回程度) | 何も入れない | 洗いなし(約10分) | 約1時間10分 |
| 汚れ・カビ・乾燥能力低下の防止(1か月に1回程度) | 市販の洗濯槽クリーナー(塩素系) | 2時間 | 約3時間30分 |
| 汚れ・におい・カビがひどいとき(2〜3か月に1回程度) | 純正ES-CD(塩素系) | 8時間 | 約9時間30分 |
シャープは、洗濯〜乾燥運転や乾燥運転をすると本体内部に糸くずがたまり、乾燥能力が少しずつ落ちることがあるので、1か月に1回程度は2時間の槽洗浄をするよう勧めている。槽洗浄はカビやにおい対策だけでなく、乾燥の効きを保つための手入れでもある。
パナソニックは「月1回程度」か、本体の「槽洗浄サイン」が点滅したときを目安にしている。槽洗浄サインは運転回数を数え、40回運転すると点滅する。日立のBD-STX130Mは決まった間隔を書かず、運転回数やほこり・糸くず・汚れの状態から本体が[お手入れおすすめ]を表示する。スマートフォンアプリ「ハピネスアップ」の通知を設定すれば、お手入れ時期をスマートフォンで受け取れる。
年末の大掃除で槽洗浄をするなら、長いコースは寝る前や外出前に始めるとよい。シャープの8時間コースは乾燥まで約9時間30分、日立にも槽洗浄11時間のコースがある。そのあいだ洗濯機は使えないので、洗濯を済ませた日の夜に回すと生活の邪魔にならない。
BD-STX130Mで槽洗浄を回す手順

日立のBD-STX130Mには、槽洗浄に関わるコースが4つある。
- 槽洗いコース(約15分):クリーナーを使わない短い洗い流し。終わったら糸くずフィルターを手入れする
- 温水槽洗浄2時間:温水を使う槽洗浄
- 槽洗浄4時間(らくメンテ洗浄):15分の槽洗いをしても[お手入れおすすめ]の点滅が続くときに使う
- 槽洗浄11時間:時間をかけて洗う長いコース
クリーナーを使うコースの流れは次のとおりだ。
- 窓を開けるなどして換気する。ドラムの中に衣類が残っていないか確かめる
- 洗濯槽クリーナー(またはSK-750、衣料用塩素系漂白剤 約200mL)を、運転を始める前にドラムに直接入れる
- 操作パネルで槽洗浄のコースを選び、スタートする
- 運転中はドラムに衣類を入れない。クリーナーがドラム以外の場所に付いたら、すぐにふき取る
日立は、ドラム内に3L以上の水が残った状態で始めると、先に排水してから運転が始まると書いている。また、洗剤を入れるよう促す表示が出たまま12時間放置すると、電源が自動で切れる。表示が出たら、そのままにせず続けて操作する。
日立は、ドラム内を温風で乾かしてカビを防ぐ「槽乾燥コース」を、洗濯運転が終わるたびに行うよう勧めている。槽洗浄で落とした汚れを再び育てないためには、月1回の大掃除より、毎回ドラムを乾かすほうが効く。
シャープのES-X12Cは、操作パネルで「洗濯」キーか「洗~乾」キーから「槽洗浄」を選び、洗い(洗浄)時間を選んでから、クリーナーをドラムに直接流し込んでスタートする。運転が終わったら、ドアパッキンと糸くずフィルターのごみを取り除くところまでが一連の手順になっている。
槽洗浄で届かないドアパッキンと洗剤ケース
槽洗浄はドラムとその裏側を洗うが、ドアのゴムパッキンと洗剤の投入口は別に手入れが要る。
ドイツの病院で起きた事例を報告した2019年の研究は、この2か所の重要さを示している。新生児病棟で、薬が効きにくいタイプの菌が赤ちゃんの体から見つかり、調べると、病棟の衣類を洗っていた家庭用タイプの洗濯機の洗剤投入口とゴムの部分から同じ菌が見つかった。米国微生物学会は、ゴムの部分に残った水などを通じて菌が衣類へ移ったとみられること、洗濯機を撤去するまで菌の広がりが止まらなかったことを紹介している。病院での特殊な事例だが、水が残りやすい場所に菌がすみつくことはどの家庭の洗濯機にも当てはまる。
シャープのES-X12Cの説明書は、ドアパッキンについて次の手入れを求めている。
- ドアパッキンをめくり、水抜き穴のごみを2〜3週間に1回程度取り除く。ごみがたまると水漏れの原因になる
- ドアのガラス面やパッキンの表裏に付いた糸くずを取り除く
- パッキンにぬめりがあるときは、酸素系漂白剤をしみ込ませた布で全周をふき取り、最後に水ぶきする
ドラムに入れて回すのは塩素系、パッキンを布でふくのは酸素系と、使い分けが書かれている点がおもしろい。酸素系そのものが悪いのではなく、ドラム式で回すと泡が問題になるということだ。
洗剤を手で入れている場合、シャープは運転後に洗剤投入部と柔軟剤カバーの手入れを求めている。自動投入タンクを使っている場合も、日立は引っ越しの前などにタンクを洗うよう書いている。液体洗剤や柔軟剤が残ると固まったり漏れたりするためだ。年末の大掃除では、槽洗浄とあわせて投入口まわりも外して洗っておくとよい。
海外の「60℃の空運転」と日本の槽洗浄
英国の消費者団体Which?は、洗濯機のにおい対策として、衣類を入れずに60℃以上で回すお手入れ運転を月に1回程度行うよう勧めている。低い温度の洗濯は衣類の汚れは落とせても、細菌を減らす力は弱いという説明だ。米国微生物学会も、省エネのために家庭の洗濯の水温が60℃を大きく下回るようになり、病原体を減らしにくくなっていると指摘している。
英国の洗濯機は本体で水を温めて洗う前提なので、「60℃以上で空運転する」という手入れが成り立つ。今回見た日本のドラム式3機種の説明書には、高温で空運転するという手入れは出てこない。代わりに求めているのが、塩素系クリーナーでの定期的な槽洗浄と、毎回の槽乾燥だ。
海外の手入れ方法をそのまま持ち込むのではなく、手元の洗濯機の説明書が指定するクリーナーとコースで、同じ「月に1回、ドラムをリセットする」習慣を作るのが現実的だ。
洗濯が終わったら、ドアを少し開けておく。Which?も、ドアを開けておくと空気が通ってドラムが乾きやすく、カビが増えにくいと書いている。小さな子どもやペットがいる家では、ドラムに入り込まないよう、チャイルドロックや開け方に気をつける。






