シャープのホットクック KN-HW24H/KN-HW16Hの取扱説明書には、「予約調理以外は、調理終了後、自動で保温に切り換わりません」と書かれている。夕方にカレーを作り、スタートキーを押して出かけたり、そのまま食卓の支度に移ったりすると、カレーは内鍋に入ったまま、ゆっくり冷めていく。
カレーやシチューのように大きな鍋で作った料理を、温かいまま室温に置いておくのは、ウエルシュ菌による食中毒の典型的な原因だ。東京都健康安全研究センターは、いわゆる「一晩寝かせたカレー」による食中毒として注意を呼びかけている。自動調理鍋で作り置きをするなら、できあがったあとの扱いまで決めておく。
ウエルシュ菌は加熱しても残る

ウエルシュ菌は人や動物の腸の中や、土、下水、川などにふつうにいる菌で、肉や魚介、野菜にも付いている可能性がある。やっかいなのは、条件が厳しくなると熱に強い「芽胞(がほう)」に変わることだ。東京都健康安全研究センターによると、ふつうの菌が75℃1分で死ぬのに対し、特に熱に強い芽胞は100℃で1時間加熱しても死なない。
煮込んでいる間は芽胞のまま生き残り、料理が冷めて12〜50℃の温度帯に入ると、ふつうの菌に戻って増え始める。同センターがまとめた東京都のウエルシュ菌食中毒120件(1963〜2017年)のうち、57件が肉を使った料理で、そのうち14件がカレーだった。とろみのある炒め煮やクリーム煮も原因食品として多い。
| 温度 | ウエルシュ菌の状態(東京都健康安全研究センターの資料から) |
|---|---|
| 100℃で1時間 | 特に熱に強い芽胞は死なない |
| 55℃以上 | 増殖を防げる。温かいまま保存するなら常に55℃以上で保温する |
| 12〜50℃ | 増える温度帯。この温度にいる時間をできるだけ短くする |
| 10℃以下 | 一気に冷やせば増殖を抑えられる |
同センターの実験では、1gあたり1000個の菌が残っている料理を、6時間かけて約60℃下げる(室温で放っておくのに近い)と、3時間を過ぎてから菌が増え始め、5時間後には100万個以上になった。2時間で約60℃下げた(急冷した)場合は、5時間たっても増えなかった。
カレーで増えやすいのは、肉などの材料に菌が付いていることが多いうえ、煮込みで料理の中の酸素が追い出され、酸素を嫌うウエルシュ菌が増えやすい状態になるからだと考えられている。東京都健康安全研究センターは、温め直すときによく混ぜると酸素が入り、生き残った芽胞が菌として増えにくくなるとも書いている。
鍋のままでは4時間たっても冷めない

農林水産省は、約80℃に温めたカレーを鍋(直径24cm、深さ約20cm)と浅いプラスチック容器(深さ2.5cm)に分け、室温(23.9℃)で1時間冷ましてから冷蔵庫に入れる実験をしている。結果の差は大きい。
| 浅いプラスチック容器 | 鍋 | |
|---|---|---|
| 室温での冷める速さ | 毎分約0.68℃ | 毎分約0.26℃(容器の約2.6分の1) |
| 室温で1時間たったとき | 40℃以下 | 62℃ |
| 20℃以下になるまで | 調理後約120分 | 調理後約242分(約4時間、計算による推定) |
| 12〜50℃を通過する時間 | 112分 | 約165分(計算による推定) |
鍋のほうは、冷蔵庫で2時間冷やしても38℃あった。しかも、62℃の鍋を入れたことで、冷蔵庫の庫内温度が4.2℃から11℃まで上がった。農林水産省は、鍋を1時間冷ましてから冷蔵庫へ入れるやり方は、ほかの食品への影響も考えると不適切だとしている。
ホットクックのKN-HW24Hの調理容量は2.4Lで、内鍋ひとつ分のカレーは実験の鍋より少ない。それでも、深さのある内鍋にたっぷり入ったカレーは、浅い容器より冷めにくい。内鍋のまま置かず、浅い容器に分けるのがいちばん確実だ。
ウエルシュ菌の毒素は、においや見た目では分からない。「一晩置いたけれど温め直せば大丈夫」とは考えず、室温に長く置いてしまったものは食べるのをやめる。
ホットクックの保温と予約調理の使い方

ホットクックで作った料理を温かいまま食べるまで置いておきたいときは、取扱説明書に従って保温を使う。仕組みは、予約調理かどうかで変わる。
| 調理のしかた | 調理が終わったあと | 注意すること |
|---|---|---|
| 予約調理 | 自動で保温に切り換わる(最大12時間後まで) | 「クリームシチュー」や「ポタージュ」「ごはん類」など、切り換わらないメニューがある |
| 予約調理以外 | 自動では保温にならない | 保温したいときは、調理終了後に保温キーを押す |
| 保温中 | 12時間を過ぎると保温が終わり、初期画面に戻る | メニューによっては時間とともに味や風味が落ちる |
予約調理は、食べる時刻に合わせて仕上がる時刻を決められる。仕上がってから食べるまでの時間が短くなるので、できたてを鍋の中で長く置かずに済む。予約は最大15時間後まで(ごはん類は12時間後まで)設定できる。
注意したいのは、保温が切れたあとだ。12時間を過ぎると保温は終わり、内鍋の料理はそのまま冷めていく。夕食の残りを保温したまま寝て、翌朝まで置くような使い方は避け、食べ終わったら保温を切って小分けに移る。
予約できない日に作り置きをするなら、スタートキーを押したあとにタイマーを1つかけておく。調理が終わる時刻に台所へ戻り、食べる分を取り分けたら、残りはすぐ容器に移す。自動では保温に切り換わらないことを前提に動くと、鍋の放置が起きにくい。
小分けして冷まし、よく混ぜて温め直す

食べきれない分は、次の順で扱う。
- 食べる分を取り分けたら、残りはすぐに浅い容器に小分けする(農林水産省の実験の容器は深さ2.5cm)。冷凍用の保存袋に入れて平らにしてもよい
- 室温で粗熱を取る。英国食品基準庁(FSA)は、熱い料理は冷蔵庫に入れず、室温で冷ましてから1〜2時間以内に冷蔵庫へ入れるよう勧めている
- 冷蔵庫へ入れる。米国CDCは、調理後2時間以内に冷蔵するよう求めている。冷蔵庫は0〜5℃を保つ
- 冷蔵した残り物は早めに食べる。FSAは48時間以内に食べるか、食べきれないなら冷凍するよう勧めている
- 温め直すときは、加熱むらがないようによく混ぜながら、中心まで十分に加熱する。CDCは74℃(165°F)以上を目安にしている
ホットクックには、冷めた料理を温め直す機能もある。取扱説明書には、冷蔵庫に内鍋ごと入れていたシチュー2人分(約400g)を、まぜながら温め直すと約20分かかるという例が載っている。少量なら内鍋ごと冷やしてもよいが、内鍋いっぱいに作った日は小分けしてから冷やす。
容器に移すときは、作った日付を書いておく。冷蔵の残り物を食べきる期限が分かりやすくなり、冷凍に回すかどうかもその場で決められる。
作り置きの量で選ぶ容量
作り置きをよくする家ほど大きな容量を選びたくなるが、量が多いほど小分けの手間も増える。ホットクックには、調理容量2.4L(2〜6人分)のKN-HW24Hと、1.6L(2〜4人分)のKN-HW16Hがある。
家族の人数が多く、一度に2食分を作って半分を冷凍する、という使い方ならKN-HW24Hが向く。2〜3人暮らしでその日に食べきる量を作ることが多いなら、KN-HW16Hのほうが残り物が出にくく、内鍋のまま置いてしまう場面そのものが減る。
どちらの容量でも、ウエルシュ菌の対策は変わらない。作った料理を12〜50℃に長く置かないこと。食べるまで保温するか、すぐ冷やすかを、スタートキーを押す前に決めておく。






