停電した瞬間、家の中で最初に困るのは照明ではなく、仕事中の通話や子どもの動画が一斉に止まることかもしれない。
たとえば夕方にブレーカーが落ち、スマホのライトでONUとルーターを探しているあいだに、家族から「ネットがない」と声が飛んでくる。
電源を戻しても通信が戻らないとき、原因はルーターだけとは限らない。
ONU、ホームゲートウェイ、Wi-Fiルーター、スイッチ、NASのどこを残すかで、必要な電源も置き場所も変わる。
バックアップ電源を導入し、守る機器と置き場所を先に決めておけば、停電時に家族が電源を探し回る手間を減らし、通信を復旧する手順にも迷いにくい。
この比較では、CyberPower CPJ500、オムロン BW55T、APC ES 750 BE750M2-JP、EcoFlow RIVER 3 Plusを、価格・配線・連携・維持費・家族の使いやすさで同じ表に置く。
Wi-Fiの入口だけを短時間守る家と、在宅勤務やスマホの充電まで続けたい家は、同じ「停電対策」でも買うものが違う。
ルーター専用のUPSを先に検討したい場合は、Wi-Fiを停電で落とさない家庭用UPSも容量と設置の前提を確認できる。
停電で困るのはWi-Fiではなく、通信の入口が順番に落ちること

家庭のネットワークは、壁の光コンセントからいきなりスマホへ届いているわけではない。
光回線の終端にあるONUやホームゲートウェイを通り、その先のWi-Fiルーターが無線を配る。
有線のスイッチ、NAS、スマートホームのハブまで動かしたいなら、電源の入口はさらに増える。
だから「ルーターにUPSをつなぐ」だけでは、構成によっては途中で通信が止まる。
ただし、家庭側の機器を動かしても、回線事業者の設備や集合住宅側の装置まで動くとは限らない。
UPSは回線そのものを延長する装置ではなく、自宅側の電源断を原因とする再起動を避ける道具だ。
まず残す機器を3段階に分ける
| 残したい範囲 | つなぐ機器 | 目的 |
|---|---|---|
| 最小構成 | ONUまたはホームゲートウェイ+Wi-Fiルーター | 家族の連絡、スマホ、短い停電への備え |
| 仕事・学習 | 上記+ノートPCの充電器または小型スイッチ | 通話や提出作業を中断しにくくする |
| 家の司令塔 | 上記+NAS、スマートホームハブ、監視機器 | 状態保持や自動化をできるだけ継続する |
最小構成なら、数百ワットの出力を持つ電源を買っても、実際に消費するのは数ワットから数十ワットに収まることがある。
反対に、モニター、デスクトップPC、プリンター、電熱器具まで同じ電源へ足すと、停電時の稼働時間は急に短くなる。
残したいものを増やすと安心感も増えるが、停電後に誰がどの機器を切るかまで決めないと、家族には「大きな電源タップ」に見える。
NASや録画機まで守る場合は、NAS・録画機の停電対策で停止順と容量を分けて考えたい。
商品より先に、守るコンセントを決める

買う前に、通信機器の電源アダプターを一度抜いて、機器名を付箋に書く。
壁コンセントから伸びる順番は、だいたい次のようになる。
壁コンセント → バックアップ電源の入力 → バッテリー出力 → ONU・ルーター・スイッチ
Wi-Fiのメッシュ子機が別の部屋にあるなら、その子機も停電時に電源が残るかを確認する。
親機だけ動いても、子機の部屋で電波を中継できなければ、家族の体感は「Wi-Fiが落ちた」ままだ。
VAとWは、片方だけ見ない
UPSの容量にはVAとWが併記される。
機器の消費電力をWだけで足し、VAを見ないと、容量が足りない組み合わせになることがある。
OMRONも、接続機器のVAとWの両方を確認し、どちらかがUPSの上限を超える場合は上位容量を選ぶよう案内している。
たとえば500VA/300Wの機種に、合計が510VA/290Wの機器をつなぐ場合、Wだけなら収まって見えるが、VAが上限を超える。
実際の消費電力は、スマートプラグの電力表示や各機器の定格を使って確認する。
測れない機器は定格値を仮置きし、ピーク時の余裕を残す。
波形と切替時間は「相性」の話だ
CyberPower CPJ500とオムロン BW55Tは、公式仕様でバッテリー時の正弦波出力を示している。
APC ES 750 BE750M2-JPは、公式ページに疑似正弦波と記載される。
これは、APCが使えないという意味ではない。
ルーターやONUだけなら候補になりやすいが、PFC電源を使うPC、NAS、録画機を同じ出力へつなぐなら、機器側の説明書とUPSの波形条件を照合したい。
停電時の切替時間も、数値が短ければすべての機器が無停止になると決まるわけではない。
UPSの定格、機器の電源回路、接続方法が同じ条件で確認できるかを優先する。
4候補を同じ軸で比べると、価格の意味が変わる

価格は2026年8月4日に確認した掲載値を基準にする。
販売店の在庫やセールで変わるため、以下は購入価格の保証ではなく、候補同士の距離を見るための目安だ。
| 候補 | 価格の目安 | 出力・容量 | 設置と連携 | 維持と家族の使いやすさ |
|---|---|---|---|---|
| CyberPower CPJ500 | 17,585円の掲載履歴(価格.com、6月28日) | 500VA/300W、正弦波、6口、半負荷11.3分 | 据え置き型。USBとPowerPanelで管理 | 4.1kg。バッテリーはユーザー交換非対応なので、本体ごとの更新を考える |
| オムロン BW55T | 38,610円(税込、公式価格表) | 550VA/340W、常時商用、正弦波 | 据え置き型。LCDで状態を確認 | 交換用BWB55Tが公式に案内され、長く使う前提を組みやすい |
| APC ES 750 BE750M2-JP | 33,440円(税込の販売店参考価格) | 750VA/450W、疑似正弦波、9口、USB 2口 | 据え置き型。出力口が多く機器を分けやすい | 3年保証。交換電池の手順と波形の相性を購入前に確認する |
| EcoFlow RIVER 3 Plus | 39,800円の公式掲載価格 | 286Wh、600W、正弦波、切替10ms未満 | AC3口、USB-C最大100W、アプリ、USB-B連携 | 約4.7kg。LiFePO4、拡張・持ち運びに対応するが保管場所が必要 |
CPJ500とBW55Tは、ルーター・ONU・小型スイッチを固定場所で守る比較になりやすい。
APC ES 750は出力口と容量に余裕があるため、機器を増やしたい家に見えるが、波形を無視して決める候補ではない。
RIVER 3 PlusはWとWhが大きく、通信機器だけでなくスマホやノートPCにも役割を広げやすい。
ただし、Whが大きいからルーターが自動的に長く動くわけではない。
接続する機器の消費電力、AC変換のロス、UPSモードの設定で時間は変わる。
ルーターだけなら、容量より配線を短くできるUPSが先になる

ルーターだけを守るなら、容量より配線を短くできるUPSが先だ。
数ワットの通信機器に数百ワットの出力を用意するのは、数字だけ見れば過剰に見える。
しかし、停電対策の価値は最大出力だけではない。
普段から壁と通信機器のあいだに置き、停電時に自動でバッテリーへ切り替わり、家族がその場所を知っていることが重要だ。
CPJ500は小型の固定配線をまとめやすい
CyberPower CPJ500は500VA/300W、バッテリー時の純粋正弦波、6口、半負荷11.3分を公式ページで確認できる。
ONU、ルーター、スイッチを同じ棚に置く家なら、口数を余らせながら短い配線にまとめやすい。
USB接続でPowerPanel Personalを使えるため、PCやNASを同時に守る場合は管理ソフトの扱いも判断材料になる。
一方、公式仕様はユーザー交換不可としている。
本体価格だけで決めると、数年後の交換時に「電池だけ替えたい」という選択肢がないことに気づく。
商品ページで確認する一点は、家庭の電源タップや機器側のプラグが、CPJ500のNEMA 5-15R出力と合うかどうかだ。
BW55Tは交換電池まで含めて考える
オムロン BW55Tは550VA/340Wの常時商用・正弦波出力で、CPJ500より少し上の容量帯にある。
大きな差を数字だけで決めるより、公式価格表と交換用BWB55Tの案内があることを、長期運用の安心材料として見る機種だ。
停電対策を一度買って終わりにせず、交換時期に純正バッテリーを手配する人がいる家に向く。
反対に、通信機器だけを短い期間守れればよく、数年後は本体をまとめて更新したいなら、交換電池の仕組みを使わない可能性もある。
購入前に見るのは、BW55T本体の価格とBWB55Tの価格を別々に確認できるかどうかだ。
本体が安く見えても、交換部品の供給状況まで把握して初めて長期費用を比べられる。
APC ES 750は機器を増やす家の比較候補
APC ES 750 BE750M2-JPは750VA/450W、9口、USB 2口、3年保証の家庭向けUPSだ。
口数が多いので、ONU・ルーター・スイッチ・小型NASの電源を同じ場所にまとめたい家では配線を分岐しやすい。
ただし、公式ページは疑似正弦波としている。
ルーターとONUの構成だけで選ぶなら大きな論点にならない可能性があるが、PCやNASを足すなら、機器側が疑似正弦波での動作を想定しているかを確かめたい。
「750VAだから一番安心」とは言えない。
容量、波形、置き場所、交換電池の手配を一つずつ確認し、9口を本当に使う家だけが口数の恩恵を受ける。
購入前に確認する一点は、商品名が似た海外モデルではなく、100V・BE750M2-JPの日本向け型番になっているかどうかだ。
数時間と持ち運びまで買うなら、ポータブル電源の役割が見えてくる

数時間と持ち運びまで買うなら、RIVER 3 Plusの役割が見えてくる。
EcoFlow RIVER 3 Plusは、286Whの容量と600Wの定格出力、10ms未満の自動切替、USB-C最大100Wを備える。
日本公式は3WのWi-Fiルーターを最大35時間動かせる目安を示しているが、これは特定の低消費電力条件での値だ。
ONU、ルーター、スイッチをACで動かせば、変換効率と各機器の消費電力が加わる。
35時間をそのまま家庭の保証時間に置き換えない。
一方で、UPSにはない持ち運びの価値がある。
停電時にルーターを守ったあと、スマホ、ノートPC、照明を別の部屋へ移せる。
在宅勤務の通信環境まで残したい場合は、在宅ワークのネットワーク電源対策と、仕事用PCを同じ出力へつなぐかを照合する。
海外公式ページは、USB-BでPCやNASと接続し、残量低下の通知や自動シャットダウンに使えるPower Managerを案内している。
日本向けの販売ページにない情報も含むため、PCやNASまで守りたい人は、対応ソフトとUSB接続条件を購入前に確認したい。
Popular Mechanicsの独立テストは、約10ポンドの小型機で600Wを出せる点と、家庭の軽いバックアップやホームオフィス向けの位置づけを評価している。
PhoneArenaも、約4.7kg、USB-C、AC、アプリ、10ms未満のUPS機能を実機で確認している。
どちらも一般家庭の全機器で同じ稼働時間を保証するものではない。
商品ページで確かめる一点は、同名のRIVER 3やRIVER 3 Maxではなく、286WhのRIVER 3 Plus(290)を選んでいるかどうかだ。
置き場所と維持費が、スペック表にない分かれ目になる

UPSは、買った日よりも、その後に棚の奥へ押し込まれたときに使いにくくなる。
警告音が聞こえる場所か、電源とLANケーブルを抜き差しできるか、子どもがつまずかないか。
テレビ台の中に入れるなら、排熱口をふさがず、ほこりが溜まったときに掃除できる余白を残す。
ポータブル電源は、さらに保管と移動の判断が増える。
EcoFlow RIVER 3 PlusはLiFePO4セル、約3000回の充放電後も初期容量の80%を維持するというメーカー条件を掲げる。
10年使えると断定するのではなく、充放電回数、温度、保管状態、保証条件を含むメーカーの前提として読む。
消費者庁は、ポータブル電源について、強い衝撃を与えない、高温環境で使わない、長期保管は直射日光を避ける、発熱・変形などの異常時は使用を中止するよう注意喚起している。
これは「防災用品だから押し入れに入れておけばよい」という扱いと相性が悪い。
維持費を同じ表で見る
| 確認する費用・手間 | CPJ500 | BW55T | APC ES 750 | RIVER 3 Plus |
|---|---|---|---|---|
| 本体の見方 | 小型UPSの掲載価格帯 | 公式価格表の本体価格 | 販売店の参考価格 | 公式価格とセールの変動 |
| 交換電池 | ユーザー交換非対応 | BWB55Tを公式案内 | 型番一致の交換電池を確認 | 内蔵LiFePO4。ユーザー交換ではなく本体保証・修理条件を見る |
| 普段の確認 | LED、警告音、USB管理 | LCDと交換時期 | 警告と保証期間 | 残量、アプリ、充電状態 |
| 保管 | 通信機器の近くに固定 | 同左 | 同左 | 移動する場所と定位置を決める |
| 家族への説明 | 警告音が鳴ったら担当者へ | LCDの表示を読む | 出力口を間違えない | AC・USB・ライトの使い分けを決める |
バッテリー交換ができることは、必ずしも安いことではない。
交換品の価格、交換作業、廃棄方法まで自分で管理することになる。
交換せず本体を買い替える方法も、管理を単純にするという意味では合理的だ。
反対に、ラックや棚の中で電源を固定し、数年単位で使い続けたい家なら、交換電池を先に調べたほうが後悔しにくい。
ポータブル電源を防災用にも使う場合は、普段の充電状態を確認する担当者を決める。
容量や充電方法を防災全体から見直すなら、ポータブル電源の選び方も用途を先に分けて確認できる。
電源が大きいほど、家族の誰かが「そのうち充電する」と考えたまま、肝心の夜に残量がないことが起きやすい。
家族が迷わない停電復旧の順番まで決めておく

電源を買うと、停電時の不安がすべて消えるように思える。
実際には、電源が残っていても、家族がどのケーブルを抜くか分からなければ復旧は遅れる。
小さな紙に、次の順番だけを書く。
- 分電盤と家の中の安全を確認し、焦ってすべての家電を入れ直さない。
- UPSまたはポータブル電源の残量と警告を確認する。
- ONU、ホームゲートウェイ、Wi-Fiルーターの表示を順に見る。
- 通信が戻らなければ、ONUを先に、次にルーターを再起動する。電源を抜く時間や待ち時間は各機器の説明書に合わせる。
- 回線側の障害が疑われる場合は、スマホのモバイル通信やテザリングへ切り替える。
ここで大事なのは、UPSにつないだ機器を何度も抜き差ししないことだ。
通信が戻らない原因を増やすため、再起動の順番と、抜いた時刻をメモする。
停電復旧後は、消費者庁の案内に沿って、電源コードや機器に焦げ、異臭、異音、水濡れがないかを確認する。
異常がある機器は使わず、ブレーカー復旧後に一斉通電しない。
UPSを買わない選択も残る
停電が短く、在宅勤務やNASを常時稼働させていない家なら、次の準備だけで十分なことがある。
- スマホを満充電に近い状態で保つ
- モバイル回線のテザリング手順を家族で試す
- ONUとルーターの電源アダプターに名前を付ける
- 停電時に連絡する家族の電話番号を紙にも残す
- 再起動する順番を冷蔵庫など見える場所へ置く
この方法は停電中も固定回線を使えるようにするものではない。
それでも、本体の購入費、置き場所、電池の管理を増やさず、必要なときだけ通信手段を切り替えられる。
条件別に決める
| 家の条件 | 選びやすい方法 | 理由 |
|---|---|---|
| ONUとルーターだけを固定棚で守りたい | CPJ500 | 500VA/300W、正弦波、6口で小型通信機器をまとめやすい |
| 交換電池を含めて長く管理したい | BW55T | 550VA/340Wと交換用BWB55Tを公式に確認できる |
| 通信機器を増やし、口数にも余裕がほしい | APC ES 750 | 750VA/450W、9口。ただし疑似正弦波の相性を確認する |
| 数時間の停電、スマホやノートPC、持ち運びまで見る | RIVER 3 Plus | 286Wh、600W、USB-C、10ms未満UPS、持ち運びに対応 |
| 停電が短く、常時運用を増やしたくない | 買わずにテザリングと復旧手順 | 本体・電池・置き場所を増やさず、判断を単純にできる |
家の配線が一か所に集まっているか、機器が複数の部屋に分散しているかで、同じ出力容量でも使いやすさは変わる。
まずONUとルーターの電源を並べ、次に仕事用PCやNASを足す。
最後に「停電が長引いたとき、何を残して何を切るか」を家族と決める。
その順番を守れば、UPSを選ぶ家も、ポータブル電源を選ぶ家も、買わない家も、自分の条件で判断できる。








